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10.232019
遺産分割証明書とは

先に遺産分割協議書の記事を書きましたが、実務上でとても便利な遺産分割証明書(遺産分割協議証明書)というものもあります。
遺産分割証明書とは
遺産分割証明書は基本的に遺産分割協議書とほとんど変りがなく、金融機関や法務局・税務署においても、効力は同じで問題なく受理されます。
ただ違う点は、「遺産分割証明書は相続人ごとに作成するもので、全てを合体させてはじめて効力が生じる」ことです。
遺産分割協議書 | 遺産分割証明書 |
・その書面に相続人全員が連名で署名捺印(実印) | ・同内容の遺産分割証明書を相続人の数だけ作成し、相続人全員がそれぞれ署名捺印(実印)した遺産分割証明書すべてを合体させて効力を生じさせる |
つまり、遺産分割協議書と違って、相続人全員で集まって一緒に署名したり、一人が署名捺印したらその書類を次の相続人に郵送して同じ書類に署名捺印してもらうことを繰り返すといった面倒なことをする必要もありません。
遺産分割証明書の見本
基本的な書類構成は遺産分割協議書と変わりはありませんが、赤字の部分だけ協議書とは違うと考えていただければと思います。
[例:被相続人:廣瀬太郎、相続人:廣瀬花子、廣瀬一郎、廣瀬次郎]
遺 産 分 割 証 明 書
被 相 続 人 廣瀬太郎
最 後 の 住 所 豊島区大塚〇丁目〇-〇-〇
最 後 の 本 籍 北海道札幌市白石区〇丁目〇-〇
死 亡 日 令和元年10月15日
被相続人廣瀬太郎死亡により相続が開始し、共同相続人全員により遺産分割協議を行った結果、後記のとおり遺産分割が成立したことを証明します。
一.被相続人名義の下記の預貯金債権及び有価証券等については、すべて換金のうえ、相続人廣瀬花子が金300万円、廣瀬次郎が金200万円を相続し、残った預貯金債権については、相続人廣瀬一郎が相続する。
[金融機関等の表示]
(1)ゆうちょ銀行に有する預貯金債権(普通預金・定期預金等)のすべて
(2)みずほ銀行○○支店に有する預貯金債権(普通預金・定期預金等)のすべて
(3)三菱UFJ銀行△△支店に有する預貯金債権(普通預金・定期預金等)のすべて
二.その他の財産及び債務について
本協議書に記載のない遺産及び後日遺産が発見された場合は、当該遺産について、相続人間で改めて協議し、分割を行うものとする。
令和元年12月25日
【相続人 廣瀬花子の署名捺印】
(住 所)
(氏 名)
署名捺印をする欄は、一人分のみ(この場合、廣瀬花子の遺産分割証明書)です。
他の相続人廣瀬一郎、廣瀬次郎の遺産分割証明書の分と2通合わせることで、遺産分割の協議が成立し有効となります。
相続人が多ければ多いほど、遺産分割協議書の作成は大変面倒なものになるので、遺産分割証明書は大変便利なものとなるはずです。
また、遺産分割証明書の日付は、すべて統一させる必要はありません。
遺産分割証明書のデメリット
では、遺産分割証明書はメリットばかりで、デメリットはないのでしょうか?
実はデメリットがないわけではありません。
本来、遺産分割協議では、相続人全員が集まって、協議の上、署名捺印を行うわけですが、遺産分割証明書の場合にはその機会が持たれないことが多いわけです。
相続人全員が、遺産分割の内容に賛成なら問題はないかもしれませんが、一部の相続人だけで協議をまとめてしまっている、あるいは、協議がまとまっていないような状態の場合には、トラブルに発展しかねません。また、署名欄が自分だけのもののため、他の相続人もこの分割内容に応じているのかどうかわかりにくいという点もあるかと思われます。
遺産分割証明書の形式を使うのなら、事前に相続人間の意見を調整して連絡した後に各相続人へ発送するなど配慮が必要となるでしょう。